051.携帯電話

 ヤツが携帯電話を耳に当ててから1時間にはなるだろう。  私は横目でちらりとヤツを見てそう思った。  ひとつの部屋に2人でいるはずなのにその距離は遠い。  私は暇を持て余して雑誌を読んだりマンガを読んだり、携帯をいじってみたり。  逆にヤツは、というと私の存在を無視して電話でのお喋りに夢中になっている。  話している相手はわかっていた。  ハルコだ。  共通の友達。ヤツを紹介してくれたのもハルコだった。  だけど私にとって怖い存在になってきている。  ヤツとは趣味が合うらしく、よくこうやって長電話をしたり買い物に行ったり2人で遊んでいるらしい。  2人が羨ましくて、嫉妬をしてる私に気がついたのはだいぶ前。  そんな私が気持ち悪い。  せめてもの抵抗なのか、私は最近男友達のユウヤとよく遊ぶ。  相手も私を妹のように可愛がってくれるし、趣味も合う。  だけど。  必要なのはヤツなのだ。  それなのに相手は私と一緒にいながらも、ハルコと電話をしている。  私もユウヤに電話してやろうかと思って携帯電話のアドレス帳を開いた。  だけど、そんなことをしても意味がないのは分かっている。  ちょっかいを出してやろうかとも思ったけど、そんなガキっぽいこと性に合わない。  部屋を出て行こうか。焦って追いかけてくるだろうか。  それはいい。  そこで何か冷たいこと言ってやろう。  どんな顔するだろうか。きっと泣きそうな顔するに違いない。  懲りるだろうか。  散々いじめて、相手がしょぼんとしたら、バーカって抱きついてやろう。  そしたら完全に私が主導権を握る。  バカな男だと心の中で呟いた。  ヤツはまだ電話に夢中だ。  私はゆっくり立ち上がって部屋を出た。  大げさにドアをしめた。  あわててヤツが出てくることを期待して私は笑った。 お題を意識せずに書いた。モデルが居たりする。
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