メール

 俺が学校に行かなくなって3日がたつ。  まぁ詳しく言えば「行かない」のではなく「行けない」のだが・・・。  行けないのにはしっかりとした理由があった。  学校に行く気になれないのだ。それどころじゃない。  この3日間ろくに寝てもいないし、飯も食べてない。  もう何もしたくないのだ。  何にもする気がおきないのだ。  あれほど好きだったTVゲームもTVの前にほっときっぱなしだし、マンガもそのままの位置から動かしていない。  そうあの日から俺は生きる力を失ったのだった。  俺には親友がいる。いや・・・「いた」だ。  そいつは小さな事故で命を失ってしまった。  しかも俺の目の前で・・・。  あの日は学校からいったん家へ帰った後、2人で遊びに行く約束をしていた。  俺とあいつの家はわりと近くてあるいて3分ちょっと所にあった。  俺達は家に帰った後、自転車で近くの公園に集まることにした。  家についた俺はすぐに制服を脱ぎ、公園へとペダルを力いっぱい踏んだ。  先に公園についたのは俺だった。  あいつはそれから3分くらいしてから遅れてやって来た。  2人で自転車をこいで公園を出た。  とりあえず近くの本屋に行くつもりだった。  俺らは行きなれた道をすいすいと走った。  本屋の前の交差点の信号までやってきた。  ちょうど青になったところだった。  ラッキーだと思って俺らは普通に信号を渡った。  俺が前であいつがちょうど後ろの方を走っていた。  急にドンっと鈍い音がして俺は後ろを振り返った。  その様子に驚いて声が出なかった。  一瞬何が起こったのか分からなかった。  心臓が止まりそうなくらい苦しくなって息もできなくなった。  はっと我に返って乗っていた自転車を乗り捨てた。  あいつの近くに寄る。  血まみれになってあいつは倒れたままだった。  俺は泣き叫んだ。  何度も何度も名前をよんだ。  返事はなかった。  俺は回りの人達に救急車を呼んでくれるよう叫んだ。  すぐに本屋のおじサンが電話してくれた。  その間俺は何度も何度も名前を叫んだ。  涙が出てきて止まらなかった。  俺は何もしてやれない悔しさに泣いた。  いつも助けてくれたあいつを大事なときに助けてやれない俺に泣いた。  すぐに救急車がきてあいつと俺は一緒に救急車にのり病院まで行った。  だけどあいつは死んだ・・・。  運ばれたその日に静かに息を引き取った。  俺は部屋のベットに寄りかかって体育座りをした。   そのままひざに顔をうずめて泣いた。  もう何度目だろう・・・3日間これのくり返しだった。  あとで分かった事だがあの事故は猛スピードで信号無視して交差点を曲がってきた車にぶつかっておきた事故らしい。  情けなくてどうしようもない。  俺は3日間ずっと攻め続けた。  どうして何もしてやれなかったんだろう??何か出きる事があったんじゃないか??  そしたらあいつは助かったんじゃないか・・・?  そんな腹ただしさが俺を襲った。  俺はその格好のまま眠りについてしまった。  それからどれくらい時間が立ったのだろう?  俺は顔を上げた。  泣きすぎで腫れた目によくあいつとメールするのに使っていたパソコンが飛び込んできた。  俺は何かに操られるようにパソコンのスイッチを入れるとメールを調べた。  受信箱に1件入っていた。  俺はそれを開いた。  はっとして手が止まった。  あいつからだ・・・。  ちょうどあの日俺らが出かける前の物だった。  俺は1度自分を落ち着かせてメールに目を通した。 もしかしたら・・・もしかしたらだけどお前がコレを読んでいるころには俺は違う世界の人間になっているかもしれない。 なんでこんなメールを送ったのかって言うと変な夢を見たんだ。 俺が・・・死んじゃう夢・・・。 だから何だか本当になりそうな気がしてコレを送ったんだ。 お前にはいろいろ言いたい事があるから。 そうそう。なんともなかったとしたらこのメールはここまで読んだら捨ててくれ。 恥ずかしいから・・・。 俺の夢の中では事故が起こった。俺はおまえの目の前で事故に遭うんだけどお前は俺を一生懸命助け様としてくれるんだ。 結局俺は死んじゃうんだけどね。 でもそれはお前のせいじゃないよ。誰のせいでもない。 まぁ一種の運命って奴?お前が一番嫌ってた言葉だけどな。 俺、お前に会えて幸せだったよ。本当に。楽しかった。 いつもお前とバカやってんのスッゲー好きだった。 だからさ、落ち込んだりしないでくれよ。 俺の分まで一生懸命生きてくれよ!!俺もいつもおまえのそばにいるからさ? 一緒に人生楽しもうぜ?なっ?? それじゃお前との約束に遅れるからこれで終わりにする。 最後に1言         「ありがとう」  最後の1行まで読み終わったとき俺は涙でいっぱいだった。  でもそれは今までみたいな悔し涙とはまた違う複雑な気持ちだった。  何かが俺の中で吹っ切れた。  腫れた目をきりっと上げると俺は部屋を出た。 「母さん。腹減った・・・。」  俺は一生あいつと生きていく。  ずっとず〜っと・・・。                              やっぱり大事な人が死んだときの気持ちってわかりません。
                                    
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