はな


ぼくはいつもここにいる。
そう、かわらずきまってここへ。
きみのへや、きみのつくえのうえにのっている。
ぼくのなまえはしらない。
きみはぼくがこうやって、じがをもっていることをしらない。
でもいいんだ。
ただきみがぼくをみてわらってくれればそれでいい。
きみのえがおでぼくのこころはあったかくなるんだ。
ぼくがこんなきもちになっていること、きみはしらない。
ぼくだって、このきもちがなんなのかしらないんだ。

まいにちきみはそうやって、ちいさなジョウロでみずをくれる。
つちがじゅうぶんしめるように。
ぼくのねがじゅうぶんみずをすえるように。
きれいなはなをさかせるように。
そしてきみはわらうんだ。にっこりと。たのしそうに。

でもそれはきのうまでのこと。
きみはへやにはいり、つくえにむかうと、かおをふせた。
かたがゆれてちいさないきづかいがきこえる。
ないてるの?
はなをすするおとがきこえて、そのうちきみはこえをあげた。
なかないで。なかないで。
きみのえがおがなければ、ぼくはまっすぐたってられないんだ。
こんなにきれいなはなをさかすことができないんだよ。

そのひからきみはずっとないたまま。
ぼくのしらないひとのなまえをよびながら。
ぼくのしらないひととふたりでうつっているしゃしんをみながら。
わらって。ねぇわらってよ。
ぼくはきみのえがおがなければいきていけない。
つちがこんなにからからだよ。

やっぱりきみはないたまま。
じゃあせめてきみのなみだをちょうだい。
きみのきれいなそのなみだをさ。
そしたらぼくはがんばるよ。
まがりかかったくきをまっすぐにもどして。
おちかかって、せんどをうしなったはなびらをまたおおきくひらいてみせるよ。
だからねぇ、そのなみだをぼくに。

きみのなみだはもうかれてしまったのかい?
きみをはげましてあげたいけれど、ぼくはもうだめみたいだ。
どうやってもちからがはいらないんだ。
ねぇ、いつかきみがかおをあげることがあったなら、ぼくにきづいてくれる?
きみのえがおであたたかいきもちになったぼくを、おもいだしてくれる?

きみのやくにたてなくてごめんね。
きみをえがおにさせてあげられなくてごめんね。
ごめんね。
ごめんね。
ごめんね。
 



詩、みたいなカンジで
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